自然由来素材がもたらす腸内環境への影響を科学的に評価
―腸内細菌叢改善や免疫機能増強の可能性―
2025年8月6日
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、腸内環境と自然由来素材との関係性に注目し、株式会社メタジェン(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO:福田真嗣)との共同研究によりin
vitro試験を実施しました。本研究では、グループ会社であるユーヤンサン(Eu Yan Sang International Ltd.、本社:シンガポール)の所有する自然由来素材を対象に、腸内細菌叢や腸内代謝物質への影響を、ヒト便検体を用いて解析し、エビデンスに基づいた機能性素材評価を行いました。
研究成果のポイント
- 腸内環境を介した自然由来素材の機能性を、個人差も踏まえて評価
- 自然由来素材ごとに腸内環境の個人差による影響の受け方が異なる可能性を示唆
- 冬虫夏草やアメリカ人参など複数の自然由来素材が短鎖脂肪酸産生を促進
研究の背景
腸内細菌叢は免疫機能や代謝機能、さらには脳機能など腸のみならず全身の健康維持に寄与しており、特に腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス素材に注目が集まっています。一方、自然由来素材は経験則に基づいて様々な症状に使用されてきたものの、その効果のメカニズムに関する科学的根拠は十分ではありませんでした。そこで本研究では、自然由来素材がもたらす腸内環境への影響について、腸内細菌叢および腸内代謝物質への影響を多角的に検証することを目的としました。
結果
6名の異なるヒト便を用いたin vitro培養試験「MGScreening™」により、各素材がもたらす腸内環境への影響を比較解析し、腸内細菌叢および短鎖脂肪酸産生量への影響を明らかにしました(図1)。本研究では、自然由来素材の種類よりも腸内細菌叢の個人差が大きく影響を与えるケースも認められた一方、特定の自然由来素材では個人差を超えて各エンテロタイプ(※1)に共通の影響をもたらすことも明らかになりました。(図2)。主要な腸内代謝物質の一つである短鎖脂肪酸は、腸管バリア機能の強化や免疫機能の調整、肥満や糖代謝機能の改善など、多様な健康効果が知られています。ヒト腸内における主要な短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸それぞれの産生量を調べたところ、素材ごとに異なる傾向が認められました。短鎖脂肪酸のうち酪酸は、腸管のエネルギー源として働くだけでなく、免疫細胞の機能や腸管バリア機能の強化などに関与していることが知られています。Lok
Mei Pa Pills(LMP)を添付したサンプルでは特に高い酪酸産生が認められ、免疫機能増強や腸内環境改善への応用が期待される結果となりました(図3)。
※1:エンテロタイプ:個人における腸内細菌叢の特徴を表す指標の一つ。人種に関わらず、欧米やアジア諸国の人々の腸内細菌叢はBacteroides属、Prevotella属、Ruminococcus属のそれぞれが優勢な3つのタイプに分類される。
図1:本研究で採用したヒト便in vitro培養試験系の概要
試験方法:
6名の異なる腸内細菌叢の特徴を有した被験者の便検体と各種自然由来素材を用いて「便-試験成分混合液」を調製し、並列嫌気静置培養を実施した。便中細菌叢と便中代謝物質をそれぞれメタ16S解析およびガスクロマトグラフィー質量分析法により解析し、統計解析・クラスタリング解析をすることによって、自然由来素材が腸内環境に及ぼす影響を評価した。
(メタジェン社実施)
表1:本研究で使用した被験品
図2:無添加条件と比較した各検体における腸内細菌・腸内代謝物質への影響
図3:自然由来素材をヒト便と共に培養した際の培地中の酪酸濃度
なお、腸内細菌叢は食事や生活習慣などに影響を受けるため個人差が大きく、食品素材等による応答も異なることがわかっています。今回の研究で用いた便検体はBacteroides、Prevotella、Ruminococcusの3エンテロタイプすべてに対応する便検体を採用することで、幅広い人々を代表する腸内環境での評価を実施しました。したがって、得られた結果は汎用性が高く、特定の腸内環境を有する層に限らず幅広い応用が期待できると考えています。
今後の展望
パーソナライズド・ニュートリション市場が広まりつつある中、本研究により自然由来素材が腸内細菌叢に作用し、腸管バリア機能の強化や免疫機能の調節などに寄与する短鎖脂肪酸量の増加を促すことが、ヒト便in
vitro培養試験「MGScreening™」により明らかになりました。今後は自然由来素材のヒト介入試験や症例集積を通じた臨床的有用性の検証を実施することで、腸内環境の可視化と科学的根拠に基づく個別最適化素材提案による次世代型パーソナライズド・ヘルスケアへと展開していきます。
ロート製薬株式会社は今後も素材開発と科学的アプローチを両立した研究を続けることで、機能性食品や化粧品等の処方開発、製品開発へ応用してまいります。
株式会社メタジェンは、腸内細菌叢の機能を明らかにするための研究開発とその事業化を様々な企業と共創することで、腸内環境に合ったヘルスケアをあたりまえにすべくさらに邁進してまいります。
株式会社メタジェン 会社概要
社名 |
株式会社メタジェン |
本社 |
山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2 |
代表者 |
代表取締役社長CEO 福田 真嗣 |
設立 |
2015年3月18日 |
資本金 |
3500万円 |
事業内容 |
腸内環境研究・解析技術の提供、研究開発支援及び受託分析サービス |
URL |
https://metagen.co.jp |